
昨年出た、氏の国内旅行にまつわる小話集。
沢木氏の足元にも及びませんが、かつて、気ままな国内旅行を楽しんでいた時期がありました。
といっても2~3年の間だけ、
それもまとまった休みの時限定、1泊2日が基本、という感じでした。
この旅には自前のルールがあり、
行先を決め、宿泊予約をするほかは何も予定を決めない、というのが1つ。
旅行中は、例えば目の前の歩行者信号の点滅が今まさに始まったとしても、
急がない・走らないというのが1つ。
要は、「予定を全部決めて、バタバタする」日常の逆を行こうという趣旨でした。
少ない機会の中でも一番足を運んだのが「東京」。
その中でも、ある年末に東京駅から秋葉原を経由して、浅草まで徒歩で行った時のことが
一番印象に残っています。
師走でバタバタする浅草寺界隈を、一足早く冬休みに入った優越感に浸りながらブラブラ。


夕食まではまだ時間がだいぶあるし、さてどうしようか、と思っていたところ
ふと、浅草って演芸ホールがあるやん、と「浅草演芸ホール」の存在を思い出しました。
当時、落語を聞くのにハマっていた(CDですが)ものの、
なぜか本場の演芸場のことはスコーン、と忘れていたのです。
これは行っとかなあかん、でもどこにあるんやろ、と思い
ふと通りの向こうを見ると、なにやら幟(のぼり)が立ち並ぶ賑やかな一角が。
まさか、ひょっとして、と思うと、つい今存在を思い出したばかりの
「浅草演芸ホール」が、まるで求めに応じて出現したかのように、すぐそこに。
一瞬、見間違いかとも思いましたが、スーっと吸い込まれるように入ってそこから数時間。
落語はじめ「演芸」をしっかり楽しみました。
もちろん、予め予定に組み込んで訪れても楽しめたと思いますが、
思いがけず体験できた、という事で記憶も楽しさもマシマシされたように思います。
予定のない旅の良さ、といったところでしょうか。

さて、沢木耕太郎「旅のつばくろ」。
国内旅のエッセイは初めて、とのことで、それだけでも興味をそそられました。
「深夜特急」で有名な氏は、国内旅行でも某ダーツの旅的な旅行がお好きなようです。
行先は青森、長野、石川、北海道、あるいは地元・東京など。
観光地を巡るような旅ではなく、本当に自分の思いついたまま、気の向くままに旅をする
氏の話を読んでいると、いつかのささやかな旅行を思い出して、
またふらっとどこかへ行きたくなりました。